恩を忘れた長者をこらしめた
空飛ぶ鉄鉢(てっぱち)と信貴山朝護孫子寺(しぎさんちょうごそんしじ)

第二十八話
 

今から約千年ほど昔のこと、信貴山のお寺に、祈りで鉄鉢を空中に飛ばすことのできる命蓮(みょうれん)という偉いお坊さんがいた。
命蓮は、厳しい修業で手中にした秘術で 托鉢(たくはつ)もしていた。

ある日、この鉢が、昔、信貴山の毘沙門様のご利益を得て大金持になった山城の国(現在の京都府)の山崎に住む、長者の家へ飛んできた。

長者は、その時の恩を忘れて、この鉢を米蔵の中へ入れ鍵をかけてしまった。
米蔵の中に閉じ込められた鉢は、長者をこらしめるため、米蔵を乗せて空を飛び信貴山へ帰ったが、驚いた長者も必死に追いかけて信貴山まで来てしまった。

この出来事で改心した長者は、命蓮に困っている人に親切にすることを誓い、米俵を返してもらったという。

この逸話は、信貴山縁起絵巻に描かれて今に伝えられている。