夫婦愛で有名な「壷坂霊験記」(つぼさかれいけんき)の主人公
お里沢市(おさとさわいち)と壷阪寺(つぼさかでら)

第十八話
 

江戸時代の寛文(1661年〜73年)の頃、盲目の沢市は、お里と壷阪寺の近くに所帯を持っていた。

三年ほどたったある日、毎晩外へ出かけるお里を激しく詰(なじ)った。
すると彼女の口から、沢市の眼が治るように毎晩壷阪の観音様に祈願しており、今夜が満願の夜であることを知らされた。

思いがけない事情に驚き、自分の疑心を恥じた沢市は、観音様に夜参りに出かけた。
二人が奥の道まで来た時、お里は数珠をとりに家に帰った。

その間に沢市はお里に苦労をかけるわが眼が憎く、思いあまって谷底に身を投げた。
それを知ったお里も夫の後を追った。
しばらくして気づくと沢市の眼は開き、くっきりとお里の顔が見えた。

この物語は明治の初め、浄瑠璃「壷坂霊験記」となって広く知られるようになった。

現在、壷阪寺には二人の像のほか、沢市の杖や物語の絵が残っている。