源氏物語の「玉鬘(たまかずら)」に現われる二本の杉(ふたもとのすぎ)
紫式部(むらさきしきぶ)と長谷寺(はせでら)

第十二話
 

玉鬘(たまかずら)は、内大臣と夕顔の間に生まれたが、4歳の時、母と死別した。

その後、筑紫現在の九州)に下り、荒くれの豪族の求婚を受けた。
しかし、姫を京に連れ帰り、父に会わせたいという乳母の願いもあって、ある夜ひそかに筑紫を去り京に上った。

当時、とくに女官の尊崇(そんすう)が厚かった長谷寺の宿坊で、光源氏の君に仕えた右近(うこん)と巡り会い、やがて源氏の君に引き取られ幸をつかんだ。

この紫式部が書きしるした、源氏物語「玉鬘」の巻で、悲運の女主人公の運命が好転する様子を、喜びのあまり右近が詠んだ歌に、二本(ふたもと)の杉が登場する。

現在、この二本の杉は、約150種7300株の牡丹が優雅に咲き誇る境内の東の一角に、かつては紫式部をはじめ清少納言や蜻蛉(かげろう)日記、更級(さらしな)日記の著者達が牛車(ぎっしゃ)で通ったと思われる参道を見下ろすように、緑の陰をおとしている。