自由酒脱な文人生・皎月流(ぶんじんいけ・
こうげつりゅう)の開祖 十五世義天(じゅうごせいきてん)と円光寺(えんこうじ)

第十話
 

延享、寛延、宝暦期にかけて、枝や花の形を優先する”いけばな”とは対照的な、文人生(ぶんじんいけ)が知識階級の間で注目を浴びた。

とくに、世の中の拘束から脱して、自由な境地を求めた文人(詩、書、画にすぐれた知識人のこと)の人生観を反映した、この煎茶道の茶花は、上層階級の武士や僧侶達に支持を受け、盛んに行なわれたという。

この文人生の一派に、渓坊蘭山の華道皎月御流(こうげつごりゅう)があった。
蘭山に師事し、生活の中でたしなむ趣味の”いけばな”の新境地に挑んでいた十五世義天は、境内に繁る樹々を題材に修業を重ねた末に皎月御流の奥義を相伝し、皎月流を創流した。

この流派は家元制度としては伝承されていないが、宗徒の間で深く静かに今なお息づいている。

円光寺には義天を偲ぶ記念碑が、文人生の題材となったであろうと思われる樹々の中にひっそりとたたずんでいる。